こんにちは。設計監理部で構造設計を担当している稲垣です。
本日は、構造設計において重要な《地震と建物の耐震性》について書こうと思います。
1.はじめに《地震と福祉施設 地域連携の必要性》
前の話になってしまいますが、2022年3月16日の23時36分ごろ
福島県沖を震源とした最大震度6強を観測する大きな地震がありました。
報道によると、避難された方や被害にあった方も多く、11年前の東日本大震災よりも揺れは大きかったという話も聞きます。
各地域で停電が発生し、深夜の時間帯という事もありかなり不安な夜になりました。また、津波についての不安もしばらくの間消えませんでした。
幸いにも、2011年の東日本大震災の時のような津波の被害が無かった事が救いですが、この地震は《福祉施設》においてはかなり難しい対応になったのではと感じています。
もちろん地震の大きさもそうですが、やはり、夜間の時間帯に発生したという点です。
高齢者や障がい者の入所施設においては、夜間には職員の数が少なく、介護の手助けがあって初めてが移動が出来る状態の高齢者や障がい者は、どうしても避難が難しい状況です。もちろん、非常時への対応については、それぞれの施設で、職員の応援体制などが決められていると思いますが、大きな地震の場合、職員が施設にたどり着けるかも不安な事もあります。
これは一般家庭でも同様に、高齢者の住む世帯や一人暮らしの高齢者も多く、大きな地震が来ると心配になってしまいます。災害時の避難は一刻を争う場合が多く、このような場合には、やはり「近隣の住民の手助け」が一番心強いのではと思います。
以前からも言われ続けていますが、高齢者施設や障がい者施設にはより強固な「地域との結びつき」が必要だとされる大きな理由のひとつであることは間違いありません。
「この施設には重度の高齢者が住まわれている」「夜間の職員体制は少ない」
などの内部状況が近隣住民に伝わっていれば、非常時に気にかけていただくことができ、利用者様の大切な命を救うことに繋がる場合があるかもしれません。
普段の生活の中で、地域との係わりを強く持つことは、そうした意味でも重要であると改めて感じました。
2.《震度とマグニチュード》について
さて、話は変わりますが、私が普段業務として担当させていただいている「構造設計」は建築物の安全性を確保する役割があります。
日本において建築物の安全性を確保するにあたり、日本で多く起こる災害である「地震」は必ず考慮しなければならない要素です。
今回はその「地震」についての基本的な知識である「震度」と「マグニチュード」の違いについて紹介したいと思います。
日本の多くの方々にとっては小さいころから地震について知る機会が多くあり、今更の内容であるかもしれませんが、基本や当たり前とされていることの確認は大切なことです。
一般には
・地震のエネルギーの大きさ(規模)を「マグニチュード」
・各地域での地震の揺れの大きさを「震度」 といいます。
ただし、マグニチュードが大きければ、震度が大きくなるとは限りません。
マグニチュードが大きくても、震源が遠い場合や深い場合は震度が小さく、逆にマグチュードが小さくても、震源が近い場合や浅い場合は、震度が大きくなります。
出典:「マグニチュードと震度の違いは? (mlit.go.jp)」(四国地方整備局)
(http://www.skr.mlit.go.jp/)
マグニチュードは、「1」増えると地震のエネルギーが「32倍」になります。例えばマグニチュード8の地震は、マグニチュード7の地震の32個分のエネルギーを持っていることになります。
※マグニチュード:「気象庁マグニチュードMj」を指す
また、震度とは、地震が起きたときのわたしたちが生活している場所での揺れの大きさを表し、日本では気象庁が10階級(0、1、2、3、4、5弱、5強、6弱、6強、7)に分けたものが使われています。地震による揺れが強くなると、震度は大きくなります。
私たちが体感するものは震度ですので、安全のためには各震度に対応した備えを日ごろからしておく必要があります。
『気象庁震度階級の解説』2ページ 発行:平成 21 年 3 月 気象庁
(気象庁 | 気象庁震度階級関連解説表 (jma.go.jp))
3.《構造設計での耐震》について
では、建物の構造設計において、地震で倒壊することなく、どのように人々の安全を守っているのかをご紹介します。
1981年に、地震に対するそれまでの研究成果を活かし、建築基準法の自身の項目がが「新耐震設計法」と呼ばれる方法に大改定されました。
この大改定で、建物を設計する際に2つの地震について検討することが義務付けられました。
一つは、その建物が存続する間に2~3回遭遇する可能性がある「中規模の地震(震度5弱~5強程度)」に対する検討です。振動性状を考慮して各階に働く水平方向の力「水平力」を算出するのですが、最下部に生じる水平力は、建物自体が支える荷重の0.2倍を標準値としています。
もう一つは、その建物の存続中に遭遇するかも知れない500年に1度規模の「大規模な地震(震度6強、7程度)」に対する検討です。最下層での標準値として自分が支える荷重の1.0倍とすることになっており、この考え方は現在に至るまで使われています。
また、建物の耐震性には地震の揺れの周期も関係しています。東日本大震災では短い周期での揺れのため、建物の倒壊が少なく、阪神淡路大震災では1~2秒に1回の揺れであったことと旧耐震基準の建物も多かったことから、建物の倒壊被害が大きかったようです。
もしも、1981年以前の旧耐震基準で建てられた建物にお住まいの方で耐震改修をされていない方がいらっしゃいましたら、様々な支援制度もありますので耐震診断・耐震改修をされることをお勧めします。
建築:住宅・建築物の耐震化について – 国土交通省 (mlit.go.jp)
4.まとめ
いかがでしたでしょうか。「震度」や「マグニチュード」など、恐らく多くの方にとっては一度は目にしたことのある内容だったのではないかと思います。
日本で長く過ごしていると地震に慣れてきてしまいます。特に離れた場所で起きた地震に対しては「また地震か」「このくらいなら、あまり強くないかな」と他人事のように思ってしまったりしないでしょうか?災害はいつ自分の身に降りかかるかわかりません。まずは身の回りに安全を確保できる環境を整えることからスタートしてみてください。
今一度、地震の規模や強さ、日ごろの備えについて確認をしていただければ幸いです。
ユーエス計画研究所
設計監理部
稲垣
≪関連記事≫
【施設設計にご興味のある方はこちらから】
ユーエス計画研究所だからできること
【弊社の福祉施設 設計事例】
【お問い合わせはコチラ】