ご覧いただきありがとうございます。顧客支援室の井上です。
今回は2024年の介護保険法改正へ向けて
現在注目されている以下のテーマについて考えていきたいと思います。- 今回の記事で扱う項目 -
1.  特別養護老人ホームの入所基準の変更?
2. 介護老人保健施設の多床室の室料を自己負担に
3. 経営に与える影響は?
1.特別養護老人ホームの入所基準の変更?

 2024年の介護保険制度改正に向け、「特養の入所基準の見直し」が検討されているのをご存じの方も多いと思います。もともと特養は、在宅生活が困難な中重度者を支えるという機能を重点的に担うため、15年度の法改正で原則として要介護3以上の方が入居できる仕組みに変更されていました。ただし特例として、要介護1,2であっても、認知症や地域の介護サービスの供給が困難などやむを得ない事情があり、在宅生活が困難な場合には入所可能とされています。

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特養・老健はどうなる?《2024年度 介護保険法改正》の論点

2022年12月7日

特養・老健はどうなる?《2024年度 介護保険法改正》の論点

ご覧いただきありがとうございます。顧客支援室の井上です。

今回は2024年の介護保険法改正へ向けて
現在注目されている以下のテーマについて考えていきたいと思います。

 

– 今回の記事で扱う項目 –

1.  特別養護老人ホームの入所基準の変更?

2. 介護老人保健施設の多床室の室料を自己負担に

3. 経営に与える影響は?

 

 

1.特別養護老人ホームの入所基準の変更?

 2024年の介護保険制度改正に向け、「特養の入所基準の見直し」が検討されているのをご存じの方も多いと思います。もともと特養は、在宅生活が困難な中重度者を支えるという機能を重点的に担うため、15年度の法改正で原則として要介護3以上の方が入居できる仕組みに変更されていました。ただし特例として、要介護1,2であっても、認知症や地域の介護サービスの供給が困難などやむを得ない事情があり、在宅生活が困難な場合には入所可能とされています。

 

しかし、19年度の調査の結果、特養の入所申込者29.2万人について地域で待機状況にばらつきがあることがわかりました。厚労省は「入所申し込み者の実態、高齢化の進行状況やそれに伴う介護ニーズは地域によって異なる」として、特養の入所基準のあり方について課題を提起しました。また、地方を中心に「高齢者人口の減少により待機者が減少している」「定員が埋まらず空床が生じている」という認識を示しました。

 

このようなことから、特養の入所基準の見直しについて、今回検討の必要性が挙げられたということです。現状、待機状況に関しては「地域によってばらつきがある」という認識を示していますので、入所基準の変更がなされるとしても、この辺りが具体的にどうなるかによって、影響が変わってきそうです。

 

 

 

2.介護老人保健施設の多床室の室料を自己負担に 

 2024年の介護保険制度改正に向けた議論の内容には様々なものがありますが、今回は、先の特養の入所基準の見直しに加えてもう1点、「老健の多床室の室料を自己負担にする」という検討を上げたいと思います。
これは、言うまでもなく老健の多床室の室料について、全額入所者の自己負担としようというものです。(特養はすでにそのようになっています)老健は、高齢者の自立・在宅復帰を目指した施設であることから、特養とは単純に比較することができないと思いますが、在宅復帰や在宅ケア機能を強化した老健も多くある一方で、比較的長期的に入所してもらい、特養に準ずるような機能となっているところもあります。当然、室料は長期の入所になるほど金額がかさみますから、老健の多床室室料の自己負担化は、より長く入所される方に大きな影響を与えると思われます。





3.経営に与える影響は?

特養の入所基準が変更され、要介護1や2でも入居できるとなると、どうなるのでしょうか?
前述の通り、この検討は必ずしも一律の取り扱いへ向かうものではなく、地域の実情に応じた特例入所要件の拡充や、日常生活自立度Ⅲ以上の認知症高齢者の取り扱いなど、状況に応じた柔軟な設定がなされる可能性があります。それでも、待機者に関するお話を特養を運営されている複数の法人様から伺うと、都市部であっても以前のような待機状況ではなく、待機者に順番に連絡をしても様々な理由で「まだ入所はいい」などと断られ、待機者数と実態とが乖離した印象をうける場合があるそうです。

一方で、「人材が不足していて満床まで利用者を受け入れられない」という例もあり、《ハードとして持っている受入可能枠》と《人員面などを考慮した場合の受入可能枠》が異なっているということも起こっています。
サービス付き高齢者向け住宅や有料老人ホームなどでは、特養の入所を待っている方に入居いただいている場合があると思いますが、現時点でもエリアによっては特養の待機が緩和したことで以前に比べて入居者の確保が難しくなったという事業者様がおられます。このような中で、さらに入所基準が緩和されると、一層入居者の確保が難しくなることも考えられます。

 また、特養側では入所の傾向が変わり、地域によっては入所者の介護度が変化するなどによって報酬総額に影響することがあるかもしれません。このような可能性がある場合には、介護度の変化によって収支がどうなるのかを見ておきたいところです。


「老健の多床室室料の自己負担化」についてはどうでしょうか?
比較的長期で入所されている方が多い運営形態の老健では、多床室の室料が自己負担となった結果、特養等よりも月利用総額が高くなると、特養に移ろうとする方が増えるかもしれません。そこで、特養の待機が減少していたり、入所要件が緩和されるなどにより、特養に入りやすい状況ができていれば、実際に転居することができる場合が増えることが考えられます。そうすると、老健によっては稼働に影響がでるかもしれません。稼働の変化によって収支差額にどのように変わるか、シミュレーションをするとイメージがしやすくなり、対応の検討に役立ちます。




おわりに

「制度」は、事業に大きな影響を与えるため、その動向は経営者が注目される事項の一つであると思います。
2024年度の改正について、現時点ではまだはっきりとせず、あくまでも検討段階で最終的にどう変わる可能性があるのか…ということですが、変化した場合にどう対応するのかをいまから想定しておくことは、改正の有無を問わず、とても役立つことと思います。
ユーエス計画研究所といたしましても、引き続き制度の動向を注視して参ります。



(株)ユーエス計画研究所
顧客支援室
井上



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