今回は、昨今多くの事業者様が悩んでおられる「職員の定着」をテーマに考えていきたいと思います。
さて、職員の定着についての統計データを見てみますと、公益財団法人 介護労働安定センターが毎年行っている全国の介護保険サービス事業所を調査対象とした《介護労働実態調査》では「人手不足感(大いに不足+不足+やや不足の合計)」が、2018年の67.2%をピークに減少傾向となっており、2020年度には60.8%となっていました。
しかし、最新の2021年度の結果では、63.0%と数年ぶりに上昇に転じています。

コラム・ブログ

《職員定着》のために事業者様ができる3つの取り組み

2022年10月10日

ご覧いただき、ありがとうございます。顧客支援室の井上です。
今回は、昨今多くの事業者様が悩んでおられる「職員の定着」をテーマに考えていきたいと思います。

 

さて、職員の定着についての統計データを見てみますと、公益財団法人 介護労働安定センターが毎年行っている全国の介護保険サービス事業所を調査対象とした《介護労働実態調査》では「人手不足感(大いに不足+不足+やや不足の合計)」が、2018年の67.2%をピークに減少傾向となっており、2020年度には60.8%となっていました。
しかし、最新の2021年度の結果では、63.0%と数年ぶりに上昇に転じています。

また、私個人としても、弊社とお付き合いいただいている多くの事業者様が、職員定着の取り組みや採用方法を模索し、実行しておられるのを日々お話の中で伺っております。
職員募集の求人を出したとしても、思うように応募があるとは限らない状況、さらには折角採用したとしても、多くの人が短い期間で辞めてしまう…といった状況は、職員の充足につながらないだけでなく、採用や入社後の育成などに関わったスタッフの意欲や採用関連のコストなど、様々な面に良くない影響を与えてしまいます。


【参考資料】
『令和3年度介護労働実態調査 事業所における介護労働実態調査 結果報告書』

公益財団法人 介護労働安定センター
43ページ:2 従業員の過不足状況(問9)
令和3年度 介護労働実態調査結果について | 介護労働安定センター (kaigo-center.or.jp)




職員定着は、複数の要素が互いに関係し合うことで効果が形成されると考えられるため、そのいくつかの取り組み・関係を継続していくことが求められます。それゆえ、人材が不足すると、取り組みの継続自体がままならないということにもなりやすく、定着が比較的安定している事業者様とそうでない事業者様との乖離がさらに広がっていくことが考えられます。

実際、「事業所単位の離職率」を見ると、離職率10%未満が51.4%と最も構成比が高い一方で、離職率30%以上の事業所も19.1%とおよそ2割にのぼり、大きな差が生じています。

では、「職員の定着に関わる要素・取り組み」として、どのようなものが考えられるのでしょうか。当記事で確認していきますので、事業所様で既にやられている取り組みの振り返りの機会として、ご覧いただければ幸いです。


– 今回の記事で扱う項目 –

1. 最多の離職理由は「職場の人間関係に問題があったため」

2.「知識や技術の習得による専門的貢献」と「ワークライフバランス」の両立

3.「より良いサービス・職場」を目指して
 「良好な人間関係」を維持するリーダーシップとこれを支援する制度





1.最多の離職理由は「職場の人間関係に問題があったため」

前の章で触れた介護労働安定センターの《令和3年度介護労働実態調査》を見ていきますと、介護職の離職理由として最も多いのが「職場の人間関係に問題があったため」(18.8%)となっています。次に、「結婚・妊娠・出産・育児」(16.9%)や「自分の将来の見込みが立たなかったため」(15.4%)などの理由が続きますが、「法人や施設、事業所の理念や運営に不満があったため」という理由も12.1%あります。


一方、現在の仕事を選んだ理由については、「資格・技能が活かせるから」(38.2%)、「やりたい職種・仕事内容だから」(37.6%)、「通勤が便利」(37.2%)、「働きがいのある仕事だと思ったから」(36.7%)が多い回答群となっています。

こうしてみると、“働きがい”を求めて職場を選んだつもりが、人間関係が良くなく、施設や事業所も「サービスを良くしていこう」という前向きな環境ではなかった…といった状況が推測できます。いかがでしょうか。現在の職場の状況を振り返り、確かに起こりうることだと感じる方も少なくないのではないでしょうか。

長く働いてもらいやすい環境づくりには職場の人間関係が深く関わっており、組織的に調整するなどの対応を職員たちの目に見える形で行っていくことが大切です。
その一方で、本当に人間関係の調整だけでよいのか?という点については、次項以降で見ていきます。




2.「知識や技術の習得による専門的貢献」と「ワークライフバランス」の両立

介護職員の方は、仕事に何を求め、日々働いているのでしょうか?
平成24年に認知症介護研究・研修大府センターの発表した《介護職のキャリア意識に関する調査研究》では、介護職の「キャリアアンカー」について調査しています。
(キャリアアンカーとは、個人のキャリア選択に関する動機や仕事に対する根源的な価値観がわかる測定ツールとされています。)

調査書によると、介護職を《指導者群》と《一般介護職群》にわけたとき、指導者群・一般介護職群ともに、「仕事と生活を両立させることを重視し、介護の専門性を追求することに価値をおいている」と結論づけられています。一方、経営管理についてのポイントは両群とも低く、「管理や経営に関わることには関心は薄い」といった傾向があるようです。

また、特に一般介護職群ではキャリアアンカーとして《LS: 生活様式》を持つ介護職が圧倒的に多く、「仕事と家庭の両立に配慮した労働環境」が介護職の定着やキャリア支援にプラスの影響を与えるとしています。
2番目に高いのは、《保障・安定》、3番目は《専門・職能別能力》であり、生活様式と生活の安定を保ちつつ、専門的能力を高め、現場での実践を重視する傾向があることがわかります。

以上の結果から、職員の定着を図るうえでは、知識や技術の習得による専門的な貢献が実現でき、より良いケアの実現に向けたチームワークが重視される職場環境を整え、かつ、休みの取りやすさなどへの配慮がされた雇用管理の仕組みが実現できていることが大切であると考えられます。





3.「より良いサービス・職場」を目指して
 「良好な人間関係」を維持するリーダーシップとこれを支援する制度

ここまで見てきたように、介護職員は、良好な人間関係の中で生活と仕事をバランスさせながら介護の専門性を追求し、より良いサービス提供に貢献したいと思う傾向にあります。その一方で管理や経営に関わることにはポジティブではない方が多いと考えられます。

「人間関係」と「介護の専門性の追求及び、より良いサービス提供の両立」を望むということは、参加する組織に「サービスを良くしていこう」という共通の目的があり、その目的に向けて人が育っていける環境・制度があり、その環境に相応しいメンバー同士の関係が構築されることが理想となるでしょう。

これらの実現のためには、目的に向かってメンバーが互いに協力できるように調整を施す、という「リーダーシップの発揮」が求められます。

このようなリーダーシップの発揮は、決して簡単なことではありませんが、職員の定着のためには、介護職員が求めていることを改めて確認しながら、少しずつそこへ向かっていこうとすることがチームにとっても、組織全体にとっても大事なのだろうと思います。もちろん、このような環境の醸成には、組織全体の制度による支えも必要になります。





職員の定着には、今回上げた3つ以外にも様々な要素が関わっていることから限られた経営資源の中でそれらをすべてカバーするのは困難ですが、介護職員などサービスの担い手がメンバーの一員として関わりたいと思う組織にしていくために、より重要と考えられることから取り組み、少しずつブラッシュアップをしていきましょう。


介護サービスは人が提供するものですので、介護事業者様にとって「職員の拡充」は質的にも量的にも、言うまでもなく重要な事項だと思います。

私どもユーエス計画研究所も、お客様の取り組みに貢献できるようサービスを拡充させ、お客様に伴走しながら個々の状況に応じた効果的な取り組みを一緒に考え、実行するための支援を行って参ります。
施設運営について、研修やご相談をご希望の方はぜひ一度弊社までお問合せください。



(株)ユーエス計画研究所
顧客支援室
井上



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